万葉人と | 2016-10-22 |
重井薬用植物園の入り口に緋扇(ひおうぎ)があります。7月〜9月にかけて咲きます。 10月に行ったときは黒い実になっていました。 万葉集では緋扇(ひおうぎ)そのものを詠んだ歌はありません。緋扇の黒い実を「ぬばたま」と言います。 これを「黒」「夜」などを導く枕詞(まくらことば)として使っています。 ぬばたま」を詠った万葉集を紹介します。 |
緋扇の黒い実「ぬばたま」 居明かして 君をば待たむ ぬばたまの 我が黒髪に 霜は降るとも 巻2-89 磐姫皇后(いわのひめのおおきみ) あかねさす 日は照らせれど ぬばたまの 夜渡る月の 隠らく惜しも 巻2−169 柿本人麻呂 |
秋麗の花 | 2016-10-12 |
虫の音や澄み渡った空、秋の深まりを感じますね。 空を仰いで両手を広げると、どこまでも高い空に吸い込まれそうです。見渡せば、庭は秋の花盛り。 シュウメイギク・ムラサキシキブ・ホトトギス・オータムセイジ・クレロデンドルム ブルーウィング |
ドライブ道中の花 | 2016-10-03 |
雨の晴れ間にちょっとしたドライブ。車窓から道端、山際の斜面に顔を見せるかわいい花。車を止め、カメラを向けました。 ピン球ぐらいの「ヤマガキ」が鈴なりでした。まだ熟していない青色や熟したようなオレンジ色。でも、渋柿でしょうね。 足元には、「ヤマハッカ」「ヤブツルアズキ」「ヌスビトハギ」が咲いていました。 子どものころ山に入ると服やズボンにたくさん張り付いて取るのに大変だった「ヌスビトハギ」。懐かしいですね。 道の駅で昼食をとりました。いい香りがするので外を見ると、なんと満開の「キンモクセイ」。秋の香りを満喫しました。 |
かの有名な楊貴妃が花を漬けたリキュール、桂花陳酒を好んだというのは有名な話。 中国語では「桂」は木犀(モクセイ)のことを指し、金木犀は橙色をいう丹の字をつけ丹桂と呼ぶらしいです。 香りのよい木、一般をあらわす語として「桂」で表します。はじめは主に肉桂(ニッケイまたはニッキ)を指していましが、モクセイが桂の意味で広く使われるようになると、最終的にはモクセイの意味となったようです。
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子どものころ、野山を 駆け回って遊んでいて、気づくとヌスビトハギの種が、服のいたるところにくっつき、とるのを苦労した思い出があります。 | |
アズキの祖先であるヤブツルアズキ。 何とも言えない花の表情です。 おしるこやぜんざいにできるかも? |
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縄文、弥生時代の遺跡から柿の種が発見されています。 柿本人麻呂は屋敷に柿が有ったので柿本と名のったそうです。 万葉集には柿の句はありません。残念です。 |
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山の斜面に沢山咲いていました。 調べても名前がはっきりしません。 ヤマハッカかな? |
彼岸花 | 2016-09-20 |
田んぼの畦道などに群生し、9月のお彼岸の頃に咲くため、「彼岸花」とか球根に毒があることから「毒花」とか言っていました。また、「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」とも言います。これは、サンスクリット語で「天界に咲く花」という意味があるそうです。おめでたいことが起こる兆しに赤い花が天から降ってくる、という仏教の経典からきているそうです。 畦道や土手で見かけますが、それには意味があると言います。 一つには、モグラや野ネズミが畦道や土手に穴を開けるのを、彼岸花の毒性のある球根を植えることで 防ぐため。 もう一つは、彼岸花の根茎は強いため、畦に植えて畦の作りを強くするため。 ついでにもう一つ、古の人は、食料がつき、草や木の皮も食べ尽くし、最後の最後の非常食として彼岸花の球根を食べたといいます。球根には毒があるので「水晒(さら)し」という技法で食べたそうです。餓死という窮地に立たされ、まさに死と直面したときに食べたのでしょうね。彼岸花には、さまざまな思いがあるのですね。 田んぼの畦道には赤色や白色の彼岸花が満開です。 稲穂が実り、刈り取りも間近でしょう。 |
あぜみちに咲く満開の彼岸花 | ||
赤色や白色の彼岸花 でいっぱいです。 彼岸花の蜜を吸いに蝶がやってきました。 |
畦道にツルボが群生しています。 愛嬌のあるカカシも見つめています。 |
万葉集には、壱師(いちし)の花が一首詠われています。 壱師(いちし)とは具体的に何を意味しているのか定かではありませんが、ギシギシ、イタドリ、イチゴ、エゴノキ などの説がありますが、彼岸花が最有力候補と言われています。 路(みち)の辺(べ)の 壱師(いちし)の花の いちしろく 人(ひと)皆(みな)知りぬ 我が恋妻は 巻11−2480 柿本人麻呂 |
虹のはな | 2016-09-05 |
児島交流センターの庭園に架かる 大きな大きな虹。 センター前の池に逆さ虹。 虹に包まれた児島の町。 急いでシャッターをきりました。 なんだか夢が大きく膨らんだ気持ちになりました。 |
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万葉歌碑 |
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JR児島駅北には、万葉歌碑があります。 この歌は、大納言に任じられて帰京する際、遊行女婦(うかれめ)・児島と詠み交わした歌です。 「大伴旅人」は数年にわたり、「大宰府」の長官として赴任していました。その間に妻を亡くしています。 望郷の念や、亡くした妻への思慕を多く詠み残した旅人にとって、児島の存在はどれほどの支えであったでしょうか。 遊行女婦(うかれめ)とは、貴族の宴会に招かれて歌を詠んだり、民謡を歌ったりして座を取り持つ教養のある 地元の女性です。 「旅人」が大宰府を去るとき、見送りに来た「児島」が詠った歌と、「旅人」が児島を通るときに筑紫の「児島」を想って 詠った歌の二首と歌碑を紹介します。 |
倭道(やまとじ)の 吉備の児島を 過ぎて行かば 筑紫の児島 思ほえむかも 巻6-967 大伴旅人 |
倭道(やまとじ)は 雲隠りたり 然(しか)れども わが振る袖を 無礼(なめ)しと思ふな 巻6-966 筑紫娘子児島 |
JR児島駅北広場には、万葉歌碑の説明があります。 吉備の児島は現在の岡山市、玉野市、倉敷市を中心とする児島半島で古代は独立した大きな島でした。 付近の海流が速く、潮待ちの港として栄えたところです。 旅人と児島の問答歌です。 |
奥津温泉 ドライブの旅 | 2016-08-28 | ||
車で走っていると木々の葉の上に白く咲く花がいっぱい。何の花だろう? よく見ると、似てるようではあるが花の形、葉の形が違う。ネットで調べるといい勉強になりました 「センニンソウ」と「ボタンヅル」 です。 「センニンソウ」は「テッセン」の原種、という話を聞いた事があります。なるほどね と思います。 |
センニンソウ | ボタンヅル | |
木や葉にからみつくように生茂って咲いています。 遠目から見ると「センニンソウ」も「ボタンヅル」もよく似ている。 |
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葉を比べてみよう。 | ||
「センニンソウ」はテッセンの葉に似ています。 | 「ボタンヅル」はボタンの葉に似ています。 |
山の木々にはツル性植物が沢山あります。「クズ」は木全体を覆いつくしています。 目を凝らしてよく見ると そのほかにも。 |
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8/15カエデドコロの花 | 8/28カエデドコロに種が。 | おもしろい種。 |
「クサギ」 灌木に花が咲いている。雄しべが長く伸びている。 | ||
「ヨウシュヤマゴボウ」(アメリカヤマゴボウ) 緑の実が赤く変わり、ピオーネのようなブドウに変身。食べられません。 「ヤマゴボウ」は花徐が直立している。このドライブでは見かけませんでした。 |
鯉が窪湿原 | |||
鯉が窪湿原は「西の尾瀬沼」とも形容される湿原です。多彩な植物が自生しています。 特に満朝系の植物である「オグラセンノウ」「ビッチュウフウロ」「ミコシギク」等が見られます。 今回は、「オグラセンノウ」「シモツケソウ」「オカトラノオ」「ハンカイソウ」「クサレダマ」など沢山の花に 出会えました。 |
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下の写真にマウスを置くと花の写真が変わります。 | ||
アギナシ | ウツボグサ | オカトラノオ |
ヤマジノホトトギス | ホタルブクロ | ハンカイソウ |
湿原のマスコットオグラセンノウ カキラン(黄褐色の花)) |
ナツアサドリ(小さい実をつけている) ノギラン(葉はショウジョウバカマに似ている) |
コバギボウシと木道 池のジュンサイ |
鯉が窪湿原に咲く花で万葉集に詠われている花もあります。 |
「カンゾウはワスレグサ」として詠われています。湿原の花は「ノカンゾウ」です。 「カンゾウ」は漢名の「萱草」を日本語読みしたものです。「野」は野原に生育するという意味です。 「カンゾウ」は別名「ワスレグサ」とも言います。 @花のつぼみを調理して食べると心配事をすべて忘れるほど、美味しいことからきているという説。 Aカンゾウの美しい花を見ると憂いさを忘れることからきているという説。万葉の歌はこちらの方かな。 |
我が宿は 甍(いらか)しだ草 生(お)ひたれど 恋忘れ草 見るにいまだ 生(お)ひず 巻11-247 柿本人麻呂 忘れ草 我が紐に付く 香具山の 古りにし里を 忘れむがため 巻3-334 大伴旅人 |
センノウは、ナデシコ科センノウ属の多年草です。夏に引き裂いたような紅い色の花をつけます。 オグラセンノウは国指定天然記念物鯉が窪湿原のマスコット的存在です。 |
なでしこが 花見るごとに娘子(おとめ)らが 笑(え)まひのにほひ思ほゆるかも 巻18-4114 大伴家持 秋さらば 見つつ偲へと妹が植ゑし やどのなでしこ咲きにけるかも 巻3-464 大伴家持 集中26首。 そのうち家持作が12首。 家持はよほどなでしこが好きだったようです。 |
化氣神社周辺の植物 | 2016-05-22 | ||
化氣神社周辺は自然保護地域に指定されています。 自然度の高い樹林には、モミ、ウラジロガシ、スギ、ヒノキなどの大木が生えています。 自然林を守るためにつる植物が周辺にたくさんあります。ヤマウルシ、ヤマイバラ、マタタビ、オオツルウメモドキ、クマイチゴなどです。 、 |
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下の写真をクリックしてスライドショーを どうぞ。 | |||
社寺林を過ぎて 二次林を歩いているとニガナ、ハナニガナ、ジシバリ(イワニガナ)、シライトソウ、 ショウジョウバカマの種、ノギラン、サワフタギ、コガクウツギ・・特にシライトソウは驚くほどの群生地。 |
ニガナ:花弁はだいたい5枚 葉は細い |
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ハナニガナ:花びらが8枚 沢山咲く |
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ジシバリ(イワニガナ):1本の茎に花が咲く 地面を茎が這うように 伸びている |
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コウゾリナ:茎や葉に毛があり 少し黒ずんでいる |
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サワフタギ:かわいい花です 実は瑠璃色になる |
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ショウジョウガカマバ:道沿い一面に花の種 4月ごろは満開だったかな? |
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ノギラン:1~2週間後には花が咲くかな? | |
シライトソウ:のり面一面に咲いている姿は 圧巻です |
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シライトソウ:アップでこんにちは |
重井薬用植物園 観察会 | 2016-05-21 | ||
今回は動物の名前のついている植物の観察会です。園内の花を紹介。 「シロウマアサツキ」「 クマツヅラ」「「クマシデ」「イヌツゲ」「ヘビイチゴ」「クマノミズキ」などもありましたが、名前だけの紹介です。 「クマツヅラ」は漢名では「馬鞭草(ばべんそう)」とも言い、一般的には「バーベナ」と言われています。 「クマノミズキ」は熊ではなく、(熊野地方のミズキ→クマノノミズキ→クマノミズキ)と変化していったようです。 植物の名前が身近な動物の名前で親しまれていて、自然と共存する日本人の心を改めて感じた観察会でした。 |
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「タヌキマメ」 花が咲いていないので葉を見ただけではわかりません。 右下の 花は8月に砂川公園で撮影したものです |
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「ヒナギキョウ」 どんな鳥のヒナを連想するのでしょうか? 植物の名前は小さいものは「こ・・・」「ひめ・・・」「ひな・・・」と付くので、小さいキキョウだから「ヒナギキョウ」なのでしょうか? 本当に小さくて可愛い花です。 |
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「サルトリイバラ」 トゲがあり、山を歩いていると引っかかって困ります。サルも引っかかることから、「サルトリイバラ」 別名に「サンキライ(山帰来)」生け花によく使われています。 葉は二つに折りたたむと両手を合わせ柏手(かしわで)を思い柏餅を包むのに使われています。 |
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「トキソウ」 園内の湿原はトキソウで満開。見事です。 花が小さいので上から見下ろすようになりますが、花を空にかざし下から見上げ、鳥の朱鷺の羽色に見立てて付けられた名前。 |
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「マイヅルテンナンショウ」 二本のテンナンショウがお互いに向き合っておしゃべりをしています。よく見てね。 テンナンショウの仲間には「マムシグサ」「ウラシマソウ」「ムサシアブミ」「ユキモチソウ」などがあります。サトイモ科に属しています。 |
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「イヌビワ」 「イヌビワ」は「イヌの(=小さい、つまらない)ビワ」といった意味が有りますが、じつはビワの仲間ではなく、イチジクの仲間です。 写真の実を見ると、イチジクに見えますね。 食べたことはないですが、黒くなった実は甘くておいしいそうです。 |
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「ウツギ」 ウツギの花を見て持統天皇の万葉集が浮かびました。 「春過ぎて 夏来たるらし 白妙(しろたえ)の 衣ほしたる 天の香具山」 巻1−28 持統天皇 春から夏への季節の移ろいを詠ったと思われます。万葉の時代は新しい季節は神が連れてくると考えられていたようで、春から夏への季節の推移を感謝する気持ちでしょうか。 この季節に咲く白い満開のウツギを見て「白妙の衣ほしたる」はもしかしたら、香具山一面に咲くウツギだったかも?と想像して万葉人の時代を共感した一日でした。 ちなみに、新古今集では 「春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山」 巻3 夏 175 小倉百人一首では、上の句と下の句で読まれています。 |
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重井薬用植物園のショウブ観察会に参加しました。 | 2016-05-05 | |||
植物園の片岡園長の「ショウブとアヤメ」の話と、植物園だよりからの紹介。 | ||||
・「いずれ あやめ か かきつばた」といわれるように、「ショウブ」「アヤメ」「カキツバタ」「ハナショウブ」はよく似て | ||||
間違えやすいです。 | ||||
・特に「菖蒲」この漢字は「ショウブ」とも「アヤメ」とも読めます。 | ||||
・ショウブはショウブ科(以前はサトイモ科)。 | ||||
・アヤメやカキツバタ、ハナショウブ類などはアヤメ科。 | ||||
・アヤメ科アヤメ属の植物を「アヤメ」と呼ぶようになったのは 18世紀以降。 | ||||
・混同を避けるために本種のショウブを音読みの「ショウブ」。下の図を参照。 | ||||
香りが魔を祓うと考えられて、端午の節句には無病息災を願う行事に利用されていた。 | ||||
・鎌倉時代以降、武家社会になると「ショウブ」という名が、「尚武(武道を尊ぶ、重んじる)に通じ、本種の葉の形も刀に | ||||
似ていることから端午の節句は「尚武の節句」として武家では特に重要な行事として行われるようになったようです。 | ||||
・その後、庶民の家庭でも祝うようになりました。 | ||||
・お風呂に入れて「しょうぶ湯」を楽しむ風習があり、薬とするよりも、さわやかな芳香と葉のみずみずしい緑と | ||||
季節感を楽しむ目的になっていったようです。 以上、講師や植物だよりからまとめました。 | ||||
ショウブ | アヤメ | カキツバタ | ハナショウブ | |
漢字 | 菖蒲(音読み) | 菖蒲(訓読み) | 杜若 | 花菖蒲 |
花 | 小さな花の集まった花序を包む 「仏炎苞」がなく、猫じゃらしみたい |
花弁の元が 網目状の模様 |
花弁の元が 白の目型模様 |
花弁の元が 黄色の目型模様 |
生育場所 | 水辺 | 畑 | 水辺 | 畑地・湿地 |
ショウブ(菖蒲または尚武) | カキツバタ(杜若) | アヤメ(菖蒲) |
ほととぎす 今来(いまき)鳴きそむ あやめぐさ かづらくまでに 離(か)るる日 あらめや 巻19-4175 大伴家持 |
われのみや 斯(か)く 恋すらむ 杜若(カキツバタ) 丹(に)つらう 妹(いも)は 如何にかあるらむ 巻10-1986 作者不詳 |
万葉集には ショウブを詠んだものが12首 カキツバタが7首 そのうちの各1首を紹介。 ショウブをあやめぐさと言っていた。 |
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2月の寒い日ですが、こぶしのつぼみが 少し膨らみました。 |
おやおや、アジサイも膨らんできました。 |
モクレンも寒さをふせぐ綿帽子がフワフワ |
庭の片隅に咲くヒトリシズカ | 朝露を受けて輝く乙女椿 | そっと、うつむくクリスマスローズ |
御津町紙江地区に花を見に行きました。 一面のセツブンソウ!感動です。 足元ではつつましやかに咲くオオイヌノフグリ。 見上げると梅の花。 |
セツブンソウ |
オオイヌノフグリ |
梅 |